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そこにひとつの席が


そこにひとつの席がある
僕の左側に
「お坐り」
いつでもそう言えるように
僕の左側に
いつも空いたままで
ひとつの席がある
 

恋人よ
霧の夜にたった一度だけ
あなたがそこに坐ったことがある
あなたには父があり母があった
あなたにはあなたの属する教会があった
坐ったばかりのあなたを
この世の掟が何と無造作に引立てて行ったことか
 

あなたはこの世で心やさしい娘であり
つつましい信徒でなければならなかった
恋人よ
どんなに多くの者であなたはなければならなかったろう
そのあなたが一夜
掟の網を小鳥のようにくぐり抜けて
僕の左側に坐りに来たのだった

 

一夜のうちに
僕の一生はすぎてしまったのであろうか
ああ その夜以来
昼も夜も僕の左側にいつも空いたままで
ひとつの席がある
僕は徒らに同じ言葉をくりかえすのだ
「お坐り」
そこにひとつの席がある
 


     黒田三郎詩集 <ひとりの女に>所収
     「現代詩文庫」思潮社



若き日の黒田三郎の代表詩集です。
この詩集で彼は詩壇の芥川賞ともいえる「H氏賞」を受賞したのでした。
この作品は 高校の頃から大好きだったものです。



どんなに多くの者であなたはなければならなかったろう

この一行が私にはとても大切でした。



テーマ :
ジャンル : 小説・文学

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プロフィール

黒猫

Author:黒猫
このブログはHPから詩の部分だけをまとめました。

10代の頃からこれらの詩はいつも自分の中にありました。
私の中にとけ込んだ詩人たちんの言葉と私自身のつたないことばだち。

八木重吉の「秋の瞳」序文ではありませんが、このつたない詩を読んでくれたあなた  私を心の友としてください。

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