深海魚<高野喜久雄>

まこと 「深さ」だけがあなたの食餌か
今日も 真暗な海の底では
潰れそうになりながら
なお耐えて
なお深みへと
くぐりつづける深海魚……………………………………

  
こんなにも あなたをそこへと向かわせるのは
こがれでしょうか 恐れでしょうか
それとも放棄 それとも狂気 それとも
まだ名づけようとてもない何か?
 
 
とまれもう あなたにすべては無用です
目も耳も
「しかし」も「なぜ」も
ましてや「あなた」も無用です
ただ光ること くぐること
千の億の水の重さで
あなたをきびしく光に変えて
ただくぐるだけ くぐるだけ
その他のすべては無用です
 
 
無用です 無用です 無用です……
と ぼくはくりかえし
とある六月の日曜日
海を見ながら一日が過ぎていた
奇妙な あなたへの恋のゆえ………
 
 
                    高野喜久雄 未完詩集から  「現代詩文庫」所収

 

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ジャンル : 小説・文学

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黒猫

Author:黒猫
このブログはHPから詩の部分だけをまとめました。

10代の頃からこれらの詩はいつも自分の中にありました。
私の中にとけ込んだ詩人たちんの言葉と私自身のつたないことばだち。

八木重吉の「秋の瞳」序文ではありませんが、このつたない詩を読んでくれたあなた  私を心の友としてください。

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