奈々子に <吉野弘>

赤い林檎の頬をして
眠っている奈々子。

お前のお母さんの頬の赤さは
そくっり
奈々子の頬にいってしまって
ひところのお母さんの
つややかな頬は少し青ざめた
お父さんにも ちょっと
酸っぱい思いがふえた。

唐突だが
奈々子
お父さんは お前に
多くを期待しないだろう。
ひとが
ほかからの期待に応えようとして
どんなに
自分を駄目にしてしまうか
お父さんは はっきり
知ってしまったから。



お父さんが
お前にあげたいものは
健康と
自分を愛する心だ。


ひとが
ひとでなくなるのは
自分を愛することをやめるときだ。


自分を愛することをやめるとき
ひとは
他人を愛することをやめ
世界を見失ってしまう。


自分があるとき
他人があり
世界がある


お父さんにも
お母さんにも
酸っぱい苦労がふえた


苦労は
今は
お前にあげられない。


お前にあげたいものは。
香りのよい健康と
かちとるにむづかしく
はぐくむにむづかしい
自分を愛する心だ。

テーマ :
ジャンル : 小説・文学

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嬉しいです。

この詩は私が人生で一番荒れていた中学のとき、中2を担任してくれた先生から最後のHRで配られたプリントに刷られていました。

私たちの担任の先生は国語の先生で、いつも言葉巧みに私たちを励まし、そして強く優しく見守ってくれました。

そんな先生にで会ったのは人生で1人だけでしたが、自分は恩師に十分恵まれていたと思うほどでした。

この詩は本当に奥深い『父』としての愛情が綴られています。

このページのおかげで
私たちを子供のように一年育ててくれた先生のことを思い出し、机の中に保管してあった、この詩のプリントを読み返しています。

どうもありがとうございました。
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黒猫

Author:黒猫
このブログはHPから詩の部分だけをまとめました。

10代の頃からこれらの詩はいつも自分の中にありました。
私の中にとけ込んだ詩人たちんの言葉と私自身のつたないことばだち。

八木重吉の「秋の瞳」序文ではありませんが、このつたない詩を読んでくれたあなた  私を心の友としてください。

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