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ユメカサゴ<吉原幸子>


ユメにみられる魚なのか
ユメをみる魚なのか

大きな水槽には
色とりどりの熱帯魚がひらめいて
ユメのようにうつくしかった
けれど その中に
ユメという名のついた魚は
ぜんぜんいない

そいつは
小さな水槽の底に沈んで
からだと同じいろの岩にあごをのせたきり
動かないでいた

口をヘの字にむすんで
黒いまるい眼で遠くをみて

まばたきもせずに
(これは当り前だが)

そいつは
ユメのようにうつくしくはなかったから

きっと
ユメをみていたのだ







………………………………
詩集『魚たち・犬たち・少女たち』


テーマ : 詩・ことば
ジャンル : 小説・文学

全てが喪われたあとに

あの人と出会ってからの記憶を思い出すままに辿っていた

あの頃の日記の自分のことば

「何故だろう 一緒に居られた時の 一番思い出す瞬間は
あの小雨の中、肩を抱かれてバス停に行った夜のことだ。
何月だったんだろうあれは…
あなたも私も、雨だか涙だかわからなかったようなあの夜。

繰り返し、繰り返し頭に浮かぶ
そして嗚咽する

あれは過去の時間
あんな時間はもうやって来ない
他ならぬあなたがそれを選ばないのだから、二度とやって来ないのだ。



揺れながらも、ずっと芯では変わらずに横たわっているあの時の心の中の情景
きっとそれは、あなたの中にも、今も流れている時間なのだと信じようとする自分
信じるには私の全存在を賭けなくてはならないというのに。


喪った「現実」の余りの重さに気が狂いそうになる。
「互いの心の中」では今もあの時間が流れていると信じる事で自分を保とうとする。
それは絶望の中の一条の光。救い。
だけどたぶん只の妄想。 」


あれから10年以上経ってしまったいま。

振り返る。
あなたが私を求めた理由や意味合いや、それでもそこに留まる理由。
あなたの背負っているもの。

自分を捨てた親を恨んでるあなたが、自身の家族を捨てる事は、きっと
家族を愛してるか愛してないか以前の次元で、
あなたが崩壊するほどの致命的行為になるんだろう
これ迄に親に向け続けた負のエネルギーが全部自分自身に跳ね返ってくるのだから。

そして心の病んだあの妻。
あなたの妻は、自分の夫の家庭環境と、其れをひっくるめた夫本人への執拗な人格否定発言を積み重ねてきた。
私の目の前でも何度もそういう残酷な発言をしていたよね。
妻すら、そのままのあなたを優しく肯定してくれなかった。
もちろんあなた自身も。
そんな負のエネルギーは、当初以上にあなたの心を縛り付け蝕んで、
あなたの人生までも支配してしまっているみたいに見えた。

一体、誰があなたの心を救えるのだろう…?


でも私から見れば… あなたのその情の深さ
あの頃、私に見せてくれた愛情
それは親から全く愛を受けずに育った人間には持てないものだと思うのだ。
あなたの親は、ねじれた方法であなたを愛した。
あなたの妻ももっとねじれた方法であなたを愛し依存している。
家族に傷ついた2人の男女の結びつき、というわけなのだろうね。

あなたの、母親への軽蔑の底には多分、母への飢えがあるだろうし、
家族を捨てた父親への憎しみの底にも同じく飢えがあるだろう。
あなたの妻がその母親に向けるねじれた愛憎は、回りまわって自分の夫への刃となる。
誰も救われていない。
だから あなたは私に何かを見出して、そんなあなたの一生分の飢えを私が多分満たしていたのだろう。

いつも思うこと。
憎しみを浄化するただ一つの方法は、相手を心底理解することじゃないだろうか
相手の人生に背負っているもの…
それはその親が背負ってきたものを受け継ぎ、親は更にその親の…
因果は続くのだ。誰かが断ち切らない限り。

「理解」とは。
ひとりの人がした事の背景に潜む、巨大な物語を丁寧に読み解くようなものかもしれない。
心の中に適切な置き場を作るためには、「理解」するしかないのだ。

理解=肯定、である必要はない。
でも全否定も全肯定も適切とは言い難いと私は思う。
ものごとはいつも、もっと複雑だ。

78%否定して22%肯定する、みたいに。

そうしてようやく整理がついて、そのことを正しく評価出来て、
その結果、苦しみをきちんと乗り越えることができる。

でも、考えてみたら、相当な苦しみを体験しているのでなければ、いちいちそこまで物事を考えて向き合う必要すらないのだよね。
幸せな人は考えない。
考えないで済むのは幸せな証拠。

どちらがいいとは言わないけどね。

もう10年以上も経ってしまった出来事を、今日ふとこの雨の日に思い出した。
私もまたあの苦しさをどうにか乗り越えて、今ここにいるのです。

願わくば 彼と彼女がこの先幸福な人生を送っていってくれますようにと祈らずにはいられない。


(June 24, 2023)









テーマ : エッセイ・散文
ジャンル : 小説・文学

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黒猫

Author:黒猫
このブログはHPから詩の部分だけをまとめました。

10代の頃からこれらの詩はいつも自分の中にありました。
私の中にとけ込んだ詩人たちんの言葉と私自身のつたないことばだち。

八木重吉の「秋の瞳」序文ではありませんが、このつたない詩を読んでくれたあなた  私を心の友としてください。

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