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亡霊


     ひとつになろう ひとつになろう 
     と どんなにそれを願っても
     ひとつになれない 淋しい種子が
     思いあまって きつく抱きあい
     互いに同じ夢を見た
     その夢が果肉の部分
     ひとよ
     ひとよ
     だからもう 薄い果肉と
     なじるのは止せ
     その夢の味 たたえたあとは
     その種子をまた 寄せて埋めよう

        枇杷の実<高野喜久雄>



固く抱きあい
ひととき儚い夢を見た私達

賭けに負けた人魚のように
すべてをもぎとられ

めくるめく深い森の中で 
「あのひと」の影と私の影が
いつまでも奏で続ける
音楽の森の中で 
道に迷い
魂を抜かれた

食べることも忘れ
老いたことも忘れ

麻薬のようでもあり
媚薬のようでもあり
触れることもできぬ孤独な音は
誰もいない森の中で 
こだまのように重なりあう
  
もう変わることのない
過去のやさしさの中
人知れず続く 天上の音楽

それはまるで 終わることのない負債






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テーマ : 自作詩
ジャンル : 小説・文学

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黒猫

Author:黒猫
このブログはHPから詩の部分だけをまとめました。

10代の頃からこれらの詩はいつも自分の中にありました。
私の中にとけ込んだ詩人たちんの言葉と私自身のつたないことばだち。

八木重吉の「秋の瞳」序文ではありませんが、このつたない詩を読んでくれたあなた  私を心の友としてください。

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