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夜の海

心は しばしば
私の予想を裏切る

 
いつのまにやら 
夜の海に 
舵も棹もなく迷子になった小舟
陸も見えない 
灯台もない
風だけが 静かに吹きつけ
舟を揺する
 
 
星灯りだけが 
無垢で うつくしく
わたしを 
甘美な不安に陥れる 
 

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九月のうた<谷川俊太郎>

あなたに伝えることができるのなら
それは悲しみではありはしない
鶏頭が風にゆれるのを
黙ってみている
 
 
あなたの横で泣けるのなら
それは悲しみではありはしない
あの波音はくり返す波音は
私の心の老いてゆく音
 
 
悲しみはいつも私にとって
見知らぬ感情なのだ
あなたのせいではない
私のせいでもない
 
 
 

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殺す <谷川俊太郎>

殺す
コレラ菌が殺す
殺す
ダンプカーが殺す電車が殺す
仕事が殺す女が殺す金が殺す
親が殺す子が殺す
殺す
不幸が殺す
殺す
幸せが殺す
六十年かかって殺す
知らぬまに殺す
あなたが殺す
あなたを

 
 
 
          詩集「落首九十九」所収

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猫は

なにも定義しない
ただ ただ
全身で 好き のかたまりになって
わたしのふところで安らぐ
わたしも猫のように
あの方のふところで
まぁるくなりたい
 
 

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日々を慰安が<吉野弘>


   さみしい心の人に風が吹く
   さみしい心の人が枯れる W.B.イエーツ



日々を慰安が
吹き荒れる。
 
慰安が
さみしい心の人に吹く。
さみしい心の人が枯れる。
 
明るい
機知に富んだ
クイズを
さみしい心の人が作る。
明るい
機知に富んだ
クイズを
さみしい心の人が解く。
  
慰安が笑い
ささやき
うたうとき
さみしい心の人が枯れる。
 
枯れる。
 
 
なやみが枯れる。

  
ねがいが枯れる。
 
 
言葉が枯れる。

 
 

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ひかる人 <八木重吉>

私をぬぐうてしまい
そこのとこへひかるような人をたたせたい 
 

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草をむしる <八木重吉>

草をむしれば
あたりが かるくなってくる
わたしが
草をむしっているだけになってくる
 
 

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虫 <八木重吉>

虫が鳴いている
いま ないておかなければ
もう駄目だというふうに鳴いている
しぜんと
涙をさそわれる
 
 
 

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冬 <八木重吉>

葉は赤くなり
うつくしさに耐えず落ちてしまった
地はつめたくなり
霜をだして死ぬまいとしている
 
 
 

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霜  <八木重吉>

地はうつくしい気持ちをはりきって耐(こ)らえていた
その気持を草にも花にも吐けなかった
とうとう肉をみせるようにはげしい霜をだした
 
 

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わたしは

わたしは一冊の本
わたしは一遍の音楽
わたしはわたしを読み
わたしに耳を傾ける

 
全身全霊で
 
そして あなた
あなたもまた

 
  
      

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ころころ<谷川俊太郎>

ころころと
心はころがる
あっちへ
こっちへ
 
ころがってぶつかる
あっちの心と
こっちの心
 
だが時に
一瞬に溶けあう
朝の光に艶めく
みどりの葉の上で
 
ふたしずくの
露のように
 
 
                     詩集「魂のいちばんおいしいところ」




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わたしの捧げかた<谷川俊太郎>

絵は窓なのよ わたしにとって
わたしは世界を眺めるの
映画は夢なの わたしにとって
わたしはすぐに忘れてしまう
本はカタログ わたしにとって
わたしはいつか世界を買うわ(多分月賦で)
でも歌は歌なの いつもいつも
わたしは小鳥に負けないわ
そしてあなたはあなたなの
わたしにわたしの捧げかたを教えてください
幸福なんてなんてもないのよ
不幸なんてなんてもないのよ
わたしがわたしになれるなら
 

                  詩集「魂のいちばんおいしいところ」 より

 

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下さい <高野喜久雄>

笛です
この孔に 指を
この口に 口を
あてて下さい
そして あなたを
あなたの無を下さい
無限に
この私
この空ろ
の中へ下さい
もっと もっと下さい
指 ふるわせて下さい
鳴ります
鳴りました ほら
少し
でも もっと
もっと鳴らねば
もう音が
聞こえない
わからない
もう許して
と言える程に
下さい
もっと
もっと下さい
もっと
もっと
もっと
もっと

 
 
 
 
                  詩集「二重の行為」より」 
 

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あなたに <高野喜久雄>

あなたの指
桜貝のような爪をお見せ
そのうなじ
待ちわびた背中をお見せ
真珠のネックレス
巻貝のようなあこがれをお見せ
ひとでのような
やどかりのような焦慮と孤独
白いふたつの砂丘をお見せ
誰もまだ触れないくぼみ
触れなかったふくらはぎ
打ち寄せる波
返す波
身もだえする汀をお見せ
遠い潮鳴り 鳴り止まぬ沖
その胸と その向こう
ずっと向こうまでもお見せ
一度
ただ一度だけお見せ
あなたが海だった証拠
それさえ見れば今度
今度こそはきっぱりと
あなたから立ち去っても見せましょう
あなたから
奪えるものは奪っても見せましょう
ただ ぶくぶくと沈んでも見せましょう
だが そのかわり
あなたもまた見なければいけません
とある夕暮れ
あなたの岸辺に 打ち上げられる一人の溺死者
その胸に しっかりと一尾の
はねる魚を抱きしめている一人の溺死者を
 
 
 
                  詩集 「独楽」 より

 

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椋鳥は <高野喜久雄>

椋鳥は 抱いている
いつまでも孵らない
腐った卵を 怪しむこともせず
 
Lよ
Lよ
わたしもまた その愚かしい椋鳥かも知れません
孵るはずのない
言葉を ひたすらに抱きしめて
 
 
           詩集「独楽」より
 

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ひとりの友に <高野喜久雄>

「何も無い」と言うな
岩の中には 一羽の鳥がいる
眼をくりぬかれ
なおもその眼を探し飛ぶ一羽の鳥が
 
 
しかし 友よ
何故かと  問わない方がよい
何故 岩の中に空は在るのか
探した眼は 何故無かったか
問うことは苦しくて
問うことは過つのみである
 
 
ただ 残された
ぎりぎりの道を行き
岩にぶつかり この鳥を見る
ほかはなかったぼくたちの眼だ
だがやはり
深く刳(えぐ)られてもいたぼくたちの眼
 
 
 
 
                    高野喜久雄詩集「二重の行為」より 
 
 
 

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深海魚<高野喜久雄>

まこと 「深さ」だけがあなたの食餌か
今日も 真暗な海の底では
潰れそうになりながら
なお耐えて
なお深みへと
くぐりつづける深海魚……………………………………

  
こんなにも あなたをそこへと向かわせるのは
こがれでしょうか 恐れでしょうか
それとも放棄 それとも狂気 それとも
まだ名づけようとてもない何か?
 
 
とまれもう あなたにすべては無用です
目も耳も
「しかし」も「なぜ」も
ましてや「あなた」も無用です
ただ光ること くぐること
千の億の水の重さで
あなたをきびしく光に変えて
ただくぐるだけ くぐるだけ
その他のすべては無用です
 
 
無用です 無用です 無用です……
と ぼくはくりかえし
とある六月の日曜日
海を見ながら一日が過ぎていた
奇妙な あなたへの恋のゆえ………
 
 
                    高野喜久雄 未完詩集から  「現代詩文庫」所収

 

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わたしの弦と 
共鳴しあう弦を持った
あなた

  
響きあいたい
 
 
わたしの心の弦を鳴らしてください。
あなたの魂で。
あなたの奏でる音楽で。
あなたの眼差しで。
あなたの声で。

 
わたしは
鳴り止まぬ 楽器となり
この空に
拡散してゆく
   

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逃げ水

悲しみ…
いったい何の悲しみ?
  
  
追いかければ追いかけるほど遠のいてゆく逃げ水のような何か?
  
自分の中にどこまでも広がる暗闇の中に
ただ音楽だけが鳴り響く
だけどそれは手で触れることはできず
ただ音だけがつむじ風のようにそこらじゅうに。
  
誰もいない
声も出ない
足が動かない
 
分かち合える人も
話しかける相手も
誰もいない
いるわけがない


わたしは(わたしだけは)
自分のことばを何度も反芻する 
演奏家が自らの演奏に抱く想いのように。
 
暗闇の中で
自分で自分を抱きしめる。 

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プロフィール

黒猫

Author:黒猫
このブログはHPから詩の部分だけをまとめました。

10代の頃からこれらの詩はいつも自分の中にありました。
私の中にとけ込んだ詩人たちんの言葉と私自身のつたないことばだち。

八木重吉の「秋の瞳」序文ではありませんが、このつたない詩を読んでくれたあなた  私を心の友としてください。

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