苦業 <黒田三郎>
石壁にかこまれた
くらい
けわしい
石の階段をのぼる
小さなランプをぶらさげながら
階段が尽きさえすれば
水平線が見えるのである
あ 階段が尽きさえすれば!
ら旋階段をのぼる
石壁にかこまれた
くらい
けわしい
石の階段をのぼる
小さなランプをぶらさげながら
とおいむかし
白々しいウソをついたことがある
愛するひとに
とおいむかし
最後の4行が 強く心に刻まれている。
そういえばこの詩で 小室等が歌っている曲がある。
大切なことばたち、好きな詩人の詩、 自分のことばたちを綴ります。
最後の4行が 強く心に刻まれている。
そういえばこの詩で 小室等が歌っている曲がある。
黒田三郎という詩人を知らなくとも
この詩に見覚えのある人は多いのではないか。
(あんまり若い人はともかく)
かつて「赤い鳥」というフォークグループがヒットさせた曲の本歌である。
メンバーの後藤悦次郎氏がある日この詩に出会って惚れ込み、
黒田の自宅に電話で「歌にしたい」と夫人に頼み込んだそうだ。
みすみす過ぎ去るに任せられている
途方もなく重大な何か
このような焦燥感が 自分のなかにも 常に存在する
それに鈍感でいられる人もいるけれど。
私は この焦燥感に突き動かされて
いつも、その「一歩」を踏み出す決意をするのだ
一人死亡とは
それは
一人という
数のことなのかと
一人死亡とは
いまだに ことあるごとに 私の心に重く響いてくる一言です。
新聞を読むたびに TVを見るたびに
幾度も心にこの執拗な問いかけが蘇るのです。
わたしたちは 記号 ではない。
血肉を持った ひとりの人間なのである。
これぞ 青年時代の 恋。
最後の2行の、なんと鮮やかなことか。
戦後最高の恋愛詩集と言われたこの「ひとりの女に」で黒田は詩壇の芥川賞ともいえるH氏賞を獲得したのであった。
すべてを失った青年の前に、この「ひとりの女」との出会いがいかに色鮮やかであったことか!・・・・・・・
最後の2行。
「失ったものをさしあげる」ではないのだ。
「失うもの」をさしあげる、と言っているのである。
感動している自分を 自分の外側から眺めてみたい という欲求。
そうすることで 安堵するのであろうか。
自分はまだ大丈夫 自分の心は死んでいない と
張り詰めた 祈り のような 想い。
若き日の黒田三郎の代表詩集です。
この詩集で彼は詩壇の芥川賞ともいえる「H氏賞」を受賞したのでした。
この作品は 高校の頃から大好きだったものです。
どんなに多くの者であなたはなければならなかったろう
この一行が私にはとても大切でした。