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下さい <高野喜久雄>

笛です
この孔に 指を
この口に 口を
あてて下さい
そして あなたを
あなたの無を下さい
無限に
この私
この空ろ
の中へ下さい
もっと もっと下さい
指 ふるわせて下さい
鳴ります
鳴りました ほら
少し
でも もっと
もっと鳴らねば
もう音が
聞こえない
わからない
もう許して
と言える程に
下さい
もっと
もっと下さい
もっと
もっと
もっと
もっと

 
 
 
 
                  詩集「二重の行為」より」 
 
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あなたに <高野喜久雄>

あなたの指
桜貝のような爪をお見せ
そのうなじ
待ちわびた背中をお見せ
真珠のネックレス
巻貝のようなあこがれをお見せ
ひとでのような
やどかりのような焦慮と孤独
白いふたつの砂丘をお見せ
誰もまだ触れないくぼみ
触れなかったふくらはぎ
打ち寄せる波
返す波
身もだえする汀をお見せ
遠い潮鳴り 鳴り止まぬ沖
その胸と その向こう
ずっと向こうまでもお見せ
一度
ただ一度だけお見せ
あなたが海だった証拠
それさえ見れば今度
今度こそはきっぱりと
あなたから立ち去っても見せましょう
あなたから
奪えるものは奪っても見せましょう
ただ ぶくぶくと沈んでも見せましょう
だが そのかわり
あなたもまた見なければいけません
とある夕暮れ
あなたの岸辺に 打ち上げられる一人の溺死者
その胸に しっかりと一尾の
はねる魚を抱きしめている一人の溺死者を
 
 
 
                  詩集 「独楽」 より

 

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椋鳥は <高野喜久雄>

椋鳥は 抱いている
いつまでも孵らない
腐った卵を 怪しむこともせず
 
Lよ
Lよ
わたしもまた その愚かしい椋鳥かも知れません
孵るはずのない
言葉を ひたすらに抱きしめて
 
 
           詩集「独楽」より
 

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ひとりの友に <高野喜久雄>

「何も無い」と言うな
岩の中には 一羽の鳥がいる
眼をくりぬかれ
なおもその眼を探し飛ぶ一羽の鳥が
 
 
しかし 友よ
何故かと  問わない方がよい
何故 岩の中に空は在るのか
探した眼は 何故無かったか
問うことは苦しくて
問うことは過つのみである
 
 
ただ 残された
ぎりぎりの道を行き
岩にぶつかり この鳥を見る
ほかはなかったぼくたちの眼だ
だがやはり
深く刳(えぐ)られてもいたぼくたちの眼
 
 
 
 
                    高野喜久雄詩集「二重の行為」より 
 
 
 

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深海魚<高野喜久雄>

まこと 「深さ」だけがあなたの食餌か
今日も 真暗な海の底では
潰れそうになりながら
なお耐えて
なお深みへと
くぐりつづける深海魚……………………………………

  
こんなにも あなたをそこへと向かわせるのは
こがれでしょうか 恐れでしょうか
それとも放棄 それとも狂気 それとも
まだ名づけようとてもない何か?
 
 
とまれもう あなたにすべては無用です
目も耳も
「しかし」も「なぜ」も
ましてや「あなた」も無用です
ただ光ること くぐること
千の億の水の重さで
あなたをきびしく光に変えて
ただくぐるだけ くぐるだけ
その他のすべては無用です
 
 
無用です 無用です 無用です……
と ぼくはくりかえし
とある六月の日曜日
海を見ながら一日が過ぎていた
奇妙な あなたへの恋のゆえ………
 
 
                    高野喜久雄 未完詩集から  「現代詩文庫」所収

 

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鏡 <高野喜久雄>

  何という かなしいものを
  人は 創ったことだろう
  その前に立つものは
  悉く 己の前に立ち
  その前で問うものは
  そのまま 問われるものとなる
  しかも なお
  その奥処へと進み入るため
  人は更に 逆にしりぞかねばならぬとは

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独楽 <高野喜久雄>

  如何なる慈愛
  如何なる孤独によっても
  お前は立ちつくすことが出来ぬ
  お前が立つのは
  お前がむなしく
  お前のまわりをまわっているときだ
  しかし
  お前がむなしく そのまわりを まわり
  如何なるめまい
  如何なるお前の vieを追い越したことか
  そして 更に今もなお
  それによって 誰が
  そのありあまる無聊を耐えていることか

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くちなし  <高野喜久雄>

くちなしの木に
くちなしの花を咲き 実がついた
ただ それだけのこと
なのに心は 鳴りだして
もう鳴り止まぬハーブのようだ
「ごらん くちなしの実をごらん
 熟しても 口をひらかぬ くちなしの実だ」



         高野喜久雄詩集 「二重の行為」 より


くちなし



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日々   <高野喜久雄>

見えない
あなたの聲に彫られて
次第に わたしは形を変えてゆく
孔をあけられ
削りとられて
もう残り尠なになりながら


けれどいつ わたしはなれる?
毛虫が蛹に
蛹が蝶に ゆくりなく
変わるよう
ただ這うものから
動かぬものに
また火を指して飛ぶものに
いつわたしは
なれるのか
もはや喉には鶸(ひわ)が来て
巣をかけている
巣をかけている


            高野喜久雄詩集 「存在」 より

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噴き上げ  <高野喜久雄>

「言葉」には
できるだけ小さい光を
そして「心」は
できるだけの高さに 置きましょう
すると
ほら
その高さまで
すべて この喪失でさえ
何と見事な「噴き上げ」
となり得たことでしょう


   高野喜久雄詩集 「存在」 より

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椋鳥は  <高野喜久雄>

椋鳥は 抱いている
いつまでも孵らない
腐った卵を 怪しむこともせず

Lよ
Lよ
わたしもまた その愚かしい椋鳥かも知れません
孵るはずのない
言葉を ひたすらに抱きしめて


        高野喜久雄詩集 「独楽」 より

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折鶴   <高野喜久雄>

無聊にまかせて
人よ
折鶴を折るのは止そう

折られた鶴は
飛び立とう と悶え苦しむ
折られた鶴は
戻ろう と悶え苦しむ


          高野喜久雄詩集 「独楽」 より

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崖 <高野喜久雄>

はじめて あなたを抱いたとき
抱くことの意味など 考えはしなかった
二度目にあなたを抱いたとき
もはや崖
もはやわたしは 崖を抱いていた
なぜであろうか
あなたのみならず 抱くものは
みな二度目から わたしの崖となる


         高野喜久雄詩集 「独楽」 より

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鏡  

ふたつの鏡を 向き合わせれば
交互に鏡は 鏡をうつして
はてしない
深いうつろを あらわに示す




           高野喜久雄詩集 「独楽」 から

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弦 (いと)<高野喜久雄>

いま わたしは願う
わたしはただの弦
ひとすじの切なる弦でありたいと
その両はしが何んであれ
苦しいわたしの何んであれ
ひたすらに 問いも忘れことばも忘れ
きびしく 逆向きの力に耐えて
張られたただの弦
ぎりぎりの力で張られ
ぎりぎりの力で踏み耐える
ぎりぎりの 弦のいのちをいのちとしたいと


そして わたしは わたしをつまびく
きこえるうちは駄目なのだ
未だ駄目なのだ!
最も高い音は 音として
誰の耳にも きこえてこない
あのきこえない高さで 鳴りひびく弦
またその高さに耐える弦
けっして切れず
けっしてひるまず
けっして在るわけ 張られたわけをうたわない弦
あかしはいつも この弦の
この非常な高さからのみやってくる
とおもわれてならない とある夕暮
いなごのような眼をつむる
傷口のような口を閉じ
そしてわたしはいちずにおもう
あの弦だ
人の耳にはただの沈黙
ただの唖としてしか ひびかない弦
あのいのちをこそ いのちとしたいと



                高野喜久雄



どこまでもストイックで求心的な詩。

この厳しさ、この透明感。

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枇杷の実<高野喜久雄>


ひとつになろう ひとつになろう
と どんなにそれを願っても
ひとつになれない 淋しい種子が
思いあまって きつく抱きあい
互いに同じ夢を見た
その夢が果肉の部分
ひとよ
ひとよ
だからもう 薄い果肉と
なじるのは止せ
その夢の味 たたえたあとは
その種子をまた 寄せて埋めよう


        詩集 <二重の行為>所収
        高野喜久雄詩集 (現代詩文庫 第 40) 思潮社


なんという 切ない詩であろうか。
わたくしたちも また
淋しい種子 なのである。




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手<高野喜久雄>


「探さないで…………
 神に向かっての 発芽です」

二日も遅れて
ぼくにとどいた君のハガキだ
駆けつけてみると
どこまでも深く 澄み切っている藍色の湖水



手を入れると 突然
手は手首から離れて
ゆらゆらと泳ぎ出した
まだあがらない君の屍体の方に向かって




         高野喜久雄 未完詩集より



あなたの想いは 魚となって
深い水底に横たわる わたしの むくろに
いつの日か  届くのであろうか

あるいは わたしの想いは。


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たぶん わたしは <高野喜久雄>

たぶん わたしは手紙です
わたしには わたしの読めない文字がぎっしりと書いてある
誰かが誰かに送る手紙です
 

愛していても
「いないわ!」と書いてある
のかも知れない手紙です
愛されていても
「もっと……
 もっと愛して!」と書いてある
のかも知れない手紙です
 

でも悲しい手紙です
わたしには あの配達夫もありません
第一 宛名がありません
ただ「あなたに」としかありません
 

だからわたしは出かけます
「もしもし もしもあなたでは……」
戸口から戸口へとたずねます
「もしもし もしもあなたでは……」
 

「違います」「違います」「違います」
どこへ行っても 違います
奇妙な不思議な手紙です
そこでわたしも手紙を書いた むろんわたしに宛てた手紙を


           高野喜久雄詩集 <二重の行為>所収 「現代詩文庫」思潮社




自らを 誰かに読んで欲しい「手紙」にたとえ
しかし一体誰に受け取ってもらえるのかもわからず
あちらこちらを彷徨うその所在なさ。
若かりし私は、最後の1行が理解できなかった。

今の私には すとんと腑に落ちるものがる。

「この世の誰かに宛てた手紙」などではない。
「この世の誰かにわかって欲しい私」でもない。
手紙を読み解くことが出来るのは只一人 この「私」のみ。 他の誰でもないということ。

これが、孤独を真っ正面から見据え、孤独であること、只独りの「わたくし」であることに 
とうに覚悟を決めた詩人・高野であることに
  若いころの甘っちょろい少女であった私は、思いを至らせることが出来なかったのだろう。

そしてまた 今の私は 独りであること 私という手紙を 誰にも宛てるつもりなどないことを
深く 心に決めたのである。 (2003/秋)



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あなたに <高野喜久雄>

わたしたちは ついぞ
抱き合うことはなかった
お互いが お互いの迷路であったから
わたしは あなたのそばで途方に暮れ
あなたもまた わたしの横で迷子になっていた
行くことも
帰ることもできなくて
ただ しくしくとあなたは泣き出し
そしてわたしは
ますます すねてゆくのだった
 

あれから十年
夢や 時や 憤り
過ぎ去るものを じっとこらえて
わたしはまだ 同じ場所にいる
あの時の迷子のままで 


           高野喜久雄詩集 <存在>所収 「現代詩文庫」思潮社



互いが 互いの迷路である という
         その せつなさ
         所在なさ

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崖くずれ<高野喜久雄>

だれの心も
見えないけれど険しい山々だ
切り立つ断崖だ
登りきれたためし無く
頂には 舞う鳥も無い
道も無く しるべも無い
何も無い きびしい山々
ただ 深くもだすものだけに
時折かすかに 聞こえてもいた
崖くずれ


        高野喜久雄詩集 <存在>所収 「現代詩文庫」思潮社




●わたしの心の中でも 崖くずれ が・・


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愛するとは<高野喜久雄>

愛するとは
ついにこわれてしまうこと
跡形もなく
己れの中の
壷もつららも吊り橋も
そしてランプも
この笛も
みんなこわれてしまうこと


それでよい
それでもわたしは愛し続ける
この道を行き
この道を行き
わたししか
ついに愛する者のない不憫なわたし
言い知れぬ
裂け目のようなわたしひとりを


                    高野喜久雄詩集 <独楽>所収 「現代詩文庫」思潮社


●言い知れぬ 裂け目のようなわたし  という ことばが鮮烈。

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プロフィール

黒猫

Author:黒猫
このブログはHPから詩の部分だけをまとめました。

10代の頃からこれらの詩はいつも自分の中にありました。
私の中にとけ込んだ詩人たちんの言葉と私自身のつたないことばだち。

八木重吉の「秋の瞳」序文ではありませんが、このつたない詩を読んでくれたあなた  私を心の友としてください。

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