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★詩の目次



 
■自分の詩の目次
自作詩の一覧


 
■随想集
蜘蛛の巣
理屈っぽい小学生
太陽の「白」
私は石になりたい
黒いランドセル
「鎮魂歌」~木原孝一さんのこと
根源的な渇き
潔い女(ひと)
「私たちは皆、無自覚に病んでいる」
かけがえのない、今
父よ。母よ。弟よ。
冬の海
「つながる」
猫。
人生は1本の蝋燭だ。
喪失
マッチ売りの少女
WE(僕たち)ではなくて I(私は)
星よりも遠く
病床に母を見舞う
金継
無神経で無知なるものたち
宮部みゆきの「模倣犯」
子供は親を選べない
心に残る映画たち(その1)「天井桟敷の人々」







 
■好きな本から その他
白いロケットがおりた街
「星の王子さま」
銀河鉄道の夜~さそりの話
泣いた赤おに
よたかの星
あたしが娼婦になったら<ある17歳の詩>
(マザー・テレサのコトバより)

 

 
 
■高野 喜久雄
下さい
あなたに
椋鳥は
ひとりの友に
深海魚

独楽
くちなし
日々
噴き上げ
椋鳥は
折鶴


弦(いと)
枇杷の実

たぶんわたしは
あなたに
崖くずれ
愛するとは



 
■黒田 三郎
苦業
洗濯
九月の風
時代の囚人(抜粋)
ああ
夜の窓
夕焼け
夕暮れ
夕方の三十分
紙風船
ただ過ぎ去るため
引き裂かれたもの
僕はまるでちがって
もはやそれ以上
出発
ある日ある時
そこにひとつの席が

 
■谷川 俊太郎
三月のうた
信じる
生きる
かなしみ
死んだ男の残したものは
九月のうた
殺す
わたしの捧げかた
庭を見つめる


未来の仔犬
からだの中に
私が歌う理由(わけ)

空の嘘


 
■吉野 弘
日々を慰安が
生命は

奈々子に
みずすまし
祝婚歌
雪の日に
夕焼け
I was born

 
■長田 弘
「感受性の領分」より
「すべてきみに宛てた手紙」より
最初の質問
きみはねこの友だちですか
こんな静かな夜
渚を遠ざかってゆく人

 
■八木 重吉

ひかる人
草をむしる



「鞠とぶりきの独楽」より
素朴な琴
うつくしいもの
「秋の瞳」序文

 
■中江 俊夫

夕方
夜と魚

 
■宮沢 賢治
銀河鉄道の夜~さそりの話
よだかの星

 
■石垣りん

この世の中にある


 
■茨木 のり子
汲む
自分の感受性ぐらい


 
■新川 和江
わたしを束ねないで
ふゆのさくら

 
■田村 隆一
帰途

 
■木原 孝一
鎮魂歌


 
■中原 中也
月夜の浜辺

春日狂想(抜粋)
汚れっちまった悲しみに
湖上
サーカス
逝く夏の歌

 
■室生 犀星
木の椅子

 
■三好 達治

昨日はどこにもありません
鴎(かもめ)


 
■高村 光太郎
ぼろぼろな駝鳥
死ねば

 
■永瀬 清子
だまして下さい言葉やさしく
あけがたにくる人よ
若さ かなしさ


 
■金子みすゞ
雀のかあさんく

 
■立原道造
枯木と風の歌
のちの思ひに

 
■吉原幸子
猫よ

江の島

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ジャンル : 小説・文学

自作詩 <目 次>

100  恋は
    恋は/ さながら悪い夢…
99  
    胸に 鉛のかたまり/ 私を押しつぶそうと…
98  亡霊
    あなたは消えた/わたしは消えた…
97  虚空
    誰もいない/なにもかも 寂しい…
96  わたしを生かすもの
    色んな人との約束があるから/日々を生きている…
95  コトバなど
    言葉は私と誰かを繋がない。/言葉はひとと私を隔てる…
94  さくら
    今日もまた/部屋に満ちる/薄めた鉛のような時間…
93  ひとり。
    古びた写真の中の笑顔/私はもうそこには居ない…
92  Happy Birthday
    求め続ける心を/隠しながら…
91  亡霊
    固く抱きあい/ひととき儚い夢を見た私達…
90  止まらぬ音
    かたちあるものならば/手で触れ/鍵をかけて…

89  刻印
    なぜ 今さら私は泣くのだ/心に刻まれた刻印…

88  
    話していた時は気にも止めなかった言葉が/ずっとあとで…
87  蜘蛛の巣
    緻密に張られた蜘蛛の糸が/無造作に壊される…
86  逝く
    消えかかった蝋燭の、弱々しい炎。/あるいは、…
85  憧憬
    静かに頭のなかに響く音に耐える/1耳をふさいでも塞いでも…
84  貝殻
    100度書いて/100度消す…
83  私の棺に
    3月に死んだら棺に沈丁花を/…
82  ゆふぐれ
    秋は その空気に/すでに 冬を孕む/…
81  
    伝えたかったものは/何だったのか/…
80  
    秋のよく晴れた朝/冬に向かう太陽/夏に向かう太陽…
79  暗闇
    薄明かりの中/離れてベットに横になると/…
78  呪い
    行かないで/私の手を離さないで/…

77  
    私は あなたに呪いをかけた/あなたの心がどこにも行けないように
76  fiction
    みてくれほどに あたたかいわけではない/…
75  音楽
    あなたは求めてやまぬ神/…
74  霙(みぞれ)
    雪になりきれぬ/ゆめの残り香…

73  
    愛は/自分が自分にかける呪い/…
72  一寸の虫にも
    老猫とみつめあう/たましいと たましいが…
71  
    あの夜/激しい雪の向こうに立っていたのは/…
70  9月
    美しい秋が来る/…
69  黄泉坂
    刻々と日々が過ぎてゆく/目眩がするような/…
68  蜻蛉
    たしかに/それは…
67  言霊
    その心の狂おしい動きに/軽々しく名前をつけるな…
66  かげろうの卵
    ことば以前のなにか/ことばにした瞬間に…
65  荒野
    信じていたものすべてが/汚れきってしまったとき…
64  楽器
    チェロはね 中身が空洞だから/きれいに響くんだよ…
63  無力な音
    寂しいから 弾く/弾くと 寂しくなる…
62  ねこになりたい
    猫になりたい/鳥になりたい…
61  春宵
    薄闇の中 /ほの白く浮き上がる満開の桜の下を…
60  弾く
    弾けば/千の針が心に刺さる…
59  暮れゆく春の庭で
    知っていた/それが 嘘でも 輝いていた…

57  かなしみ
    薄いグラス一杯に張られた水の表面だ/…
56  プロメテウスの火
    歌うたび/喪ったものにえぐられる…
55  月を追われた兎
    月には かつて兎がいた/いまは もう いない…
54  私の想いを
    私の想いを/一匹の猫にたとえたら…
53  空っぽの椅子と  (2011)
    ひっそりと/私の「現実(うつつ)」の中には いつも…
52  宝箱
    何を守ろうとしている? /「宝箱よ」…
51  音楽
    眠れぬ日々の夢とうつつに/目眩の中で弾くBACH…
50  秋の別れ
    秋が来るたびに私は哭くだろう/…
49  渇く
    まるで海水のように/飲めば飲むほど…
48  からだを通して
    からだを通して/愛は執着にかわり…
47  残酷な獣
    アクセルとブレーキを同時に踏み続ける/…
46  あなたが求めるものが
    あなたが求めるものが 美しい花ならば/わたしは花になろう…
45  
    文字にはできない/岩のような 想い…
44  深海魚のように
    すべての扉を閉じて/静かに…
43  あおおに。
    「泣いた赤鬼」の中の「青鬼」のように/…
42  森の中で
    深い森の中で/迷子になって 泣いている子供…
41  こころは
    こころは/見えない檻のなかに…
40  孵らぬ卵
    孵りもしない卵を抱いて/…
39  夜の海
    心は しばしば/私の予想を裏切る…
38  猫は
    なにも定義しない/ただ ただ…
37  わたしは  
    わたしは一冊の本/わたしは一遍の音楽…
36    
    わたしの弦と/共鳴しあう弦を持った…
35  逃げ水
    悲しみ…/いったい何の悲しみ?…
34  私がほしいものは (2010)
    私がほしいものは/…
33  春の夜のひとりごと (2010)
    あなたの幸せで心に灯がともること/…
32   (2010)→★改訂 2011/4
    私は 私の森の中に隠れる /…
31  閉め出された子供 (2010)
    扉の中に入りたいけれど/鼻先で 扉は閉まる…
30  冬はいつも     (2010)
    冬はいつも/誰かに…
29  石になりたくなる (2010)
    何も感じない石になってしまいたくなる/…
28  ムジカ       (2010)
    寝ても覚めても/頭の中を占拠している…
27  考える        (2007)
    私はなにに希望をつないでいる?/…
26  喪失        (2007)
    人、とだろうが/猫、とだろうが…
25  不思議な石臼    (2004)
    私の心は/停まらなくなった石臼…
24  虚空        (2003)
    私の心は 中空でとまったまま/…
23  意味        (2003)
    私が知りたかったのは「意味」/…
22  失われてゆくもの  (2001)
    失われてゆくもの/それは/鏡の中の私…
21  冬枯れ       (2001)
    孤独は/静かに 心をむしばんでゆく…
20  無題  
    いろいろなことのあった 十九のわたし/…
19  抱擁  
    恋しい人との抱擁/それは いつも…
18  きんもくせい   (Aged 30)
    ああ/そうか/この 香り…
17  無題       (Aged 29)
    桜の花 や 梅の香 /くちなしや 沈丁花…
16  恋        (Aged 29)
    人生 という/長い夢の中で…
15  魚─別れるひとに─    (Aged 27)
    私の猫はいつも暗い方をみつめている/…
14  月と魚──恋しいひとに─ (Aged 27)
    わたしは 深い夜の海に棲む魚/…
13              (Aged 24)
    朝一番に/ブリキの洗面器に張った水のような…
12  無題~カタツムリ     (Aged 22)
    聞きたくもないのに 一方的に/…
11  ガラス玉         (Aged 22)
    まるい ガラス玉はうつくしい/完全で…
10       (Aged 20)
    それなのに あなたは/コトバを手放そうとはしなかった…
9  扉     (Aged 19)
    おそるおそる/そちらを向いてみる…
8  別れ    (Aged 19)
    日が暮れて/鳥が飛んで…
7       (Aged 17)
    扉をあけると/そこは 雑踏…
6       (Aged 17)
    海は 風と一緒になりたくて/荒れ狂う…
5  夕暮    (Aged 17)
    からだの中に うずまく/ことばたち…
4  薄暮    (Aged 16)
    何も云ってくれないから/わたしは いつも おきざり

3  無題    (Aged 16)
    なにも見ない眼と/なにも云わない口と…
2  無題    (Aged 16)
    心よ凍てつけ/こおってしまえ…
1  黄昏   (Aged 15)
    夕暮れ時/いつのまにか一羽の鳥になって…

  


  

テーマ :
ジャンル : 小説・文学

エセ「正義」が嫌い(コロナ騒ぎに寄せて)

貸切り営業の美容院でオーナーとコロナ話しながらカットしてもらってきたんだけども。 同業者同士でもあちこち「かなりキツイ」ってなってると。 「ただ1ヶ月延ばすとか謂われてもさ、じゃあどういう条件になったら緩和すんのか指針出せよなって😡 感染者数これ割ったらとかさあ。ふざけんじゃねーよ」 (当然だよね)   そこは新宿と目黒の2店舗持っててスタッフ7-8人抱えてる。 前年同月比で24%だって。 (76%減てことよ) そこはまだ有名店系列だからましな方かも。   「固定費はかかるもんねえ」って会話してて、テナントビルごと休業なら家賃かからないけどねえ、それ以外は大屋さん次第だもんねえ、って言ったら、いま大家さんと交渉中なんだって。 「いま10%までは引き出したんだけど正直それじゃ小遣い程度だからね」 「(私)でもさ、それで退去してもこの状態じゃ次のテナント埋まらないじゃん? 大家的にも得じゃないよね?」 「そうそう。たからもう、その辺ちらつかせるしかないと思ってるんだけとね」 「今、不動産屋からバンバン電話かかって来るんだよね。"いい条件で物件ありますよ"ってさ。支店増やしませんかてさ。 まあ、苦しいけど、これを商機と思って勝負かけようかとも思ってるんだよね」 「(私)そのくらいのイキでないと乗り越えられないよね。ガンバレー  でも移転するとかでも相互に居抜きでもない限りすごいお金かかるよねえ」 「それな」   「経済より命」とかしたり顔で言ってる人の大半は、経営者ではない「ぶら下がり」の立場で、自粛とかいわれても所得が致命的には減らない人じゃないかと思ってます。 経済的リスクは社長さんたちが被ってくれてる立場。  自分達は多少の不自由を我慢すれば良いだけの立場。   そして万一勤めてる会社が資金繰りショートして解雇になったとしても手厚い失業保険で1年くらいは食べてける立場じゃないかな?   で、そういうとこに勤めてる人の多くは新卒からそういうレベルの環境しか知らないかもね。言わば「箱入り」。  そして「箱入り」は箱の外を本当にはわからないんじゃないかな。   あれは体験するまでなかなか体験としては理解できないと思うんだよなあ。    わからないくせに「経済より命」って詰め寄る「正義」って好きじゃない。

テーマ : エッセイ
ジャンル : 小説・文学

猫よ


胡桃ほどの大きさの
その脳みそで

死んだ子の
顔はおぼえてゐないのだね
ただ 数だけの
ひとつ といふ数だけの
おぼろげな記憶?

おまへが 誰に教はりもしないのに
袋を破って 袋を食べて
あの子の毛並がふんはり立つほどなめて それから
両端から嚙みつぶすやうに止血しながら
上手にヘソの緒を切るのを見たとき
ほとんど <神>を信じさうになった
(<本能>といふことばでは足りなかった!)

でもその時すでに あの子は息をしてゐなかったのだ
わたしが 雪を掘って
雪の下の土を掘って
椿の根もとに 埋めたのだよ
もうひとつ 袋のままの未熟児といっしょに
(あの子には 初めから見向きもしなかった
だから 数にも入ってゐないらしいけれど)

驚いたことに
それから三日たって
おまへはもう一度 死んだ子とそっくりの子を一匹産んだ
こんどはひっそり
わたしを呼びもせず
わたしに いっしょにいきませもせずに

けれどおまへには相変わらず
ひとつ といふ欠落の記憶があったのか
(うらやましいことに
 たぶん<かなしみ>の記憶ではなく
それでおまへは 一匹を盗む
十日前に同じ種の子を四匹産んだ 実の母から
戻しても 戻しても
一匹だけを盗む
(この三日間さうしつづけてきたやうに)

母親は 怒りもせずにそれを見てゐる
やがて突然 あとの三匹の仔猫ごと
娘の傍らに引き移って
やさしく やさしく 娘をなめる
娘はまた ぜんぶの子たちを抱きかかへ
息もつかせず なめつくす

<愛>と呼んではいけないのだらうか
親子 姉弟 恋がたき同士入り乱れ
ある子は祖母の ある子は姉の
マッチ棒の先ほどの可愛い乳首にすがりつき
眠ってはなめ なめては眠り
<かなしみ>さへも宿らない
おまへたちの 胡桃ほどの脳に
宿ってゐる何かを
その深い安らぎを
<愛>と呼んでは いけないのだらうか
わたしたちの
梨の実ほどの脳で


「ブラックバードを見た日」所収(1986)

テーマ :
ジャンル : 小説・文学

心に残る映画たち(その2)「家族の肖像」

Gruppo di Famiglia in un Interno
イタリア
1978年日本公開。


封切時に岩波ホールで観ました。大学1年の時。
なにしろ伏線が張り巡らされていて、
1回ではとらえきれなかったのを覚えています。
3回めぐらいに「すごい」と唸ったような。
ヘルムート・バーガーとバート・ランカスターが素敵です。
あと、あの悪魔的美少女。ぞくぞくしました。
そして舞台演劇的なつくりが好き。

カメラは 教授の屋敷から出ません。
一度だけ外部に出るが他はとにかく教授の全世界である屋敷の中です。
それも特に彼の書斎。


自分の屋敷の中に籠ってリアルな世俗の人間関係を断つことで心の平穏を保ち暮らしている老教授の世界に、有無を言わさず「外」がなだれ込んできて生の人間たちとの関係により教授の平穏はかき乱されます。
しかし 最後に全てが彼の世界から去ってしまって、
彼は「元通り」のひとりきりになるのだが そこには埋めることのない喪失感、人を愛したものだけが味わう傷跡が深く横たわっている。
人と関わらないことで得られる心の安らぎと
人を愛したことで残る欠乏、痛みと
いったいどちらが人生の幸福なのか。
若い私にそんな感想を残した作品です。

(MovieWakerより)
ローマの豪邸で静穏そのものの生活を送る孤独な教授が、ある家族の一群に侵入され、そのことによっておきる波紋をヨーロッパ文明と現代貴族のデカダンスを根底に描く。製作はジョヴァンニ・ベルトルッチ、監督は「ベニスに死す」のルキノ・ヴィスコンティ、助監督はアルビノ・コッコ。「若者のすべて」以来ヴィスコンティ映画の常連エンリコ・メディオーリの原案を彼とスーゾ・チェッキ・ダミーコとエンリコ・メディオーリが脚色。撮影はパスカリーノ・デ・サンティス、音楽はフランコ・マンニーノ、編集はルッジェーロ・マストロヤンニ、美術はマリオ・ガルブリア、衣裳はヴェラ・マルゾが各々担当。出演はバート・ランカスター、シルヴァーナ・マンガーノ、ヘルムート・バーガー、クラウディア・マルサーニ、ステファノ・パトリッツィ、エルヴィラ・コルテーゼ、ギイ・トレジャン、ジャン・ピエール・ゾラ、ロモロ・ヴァッリ、ウンベルト・ラホ、クラウディア・カルディナーレ、ドミニク・サンダなど。日本語版監修は清水俊二。テクニカラー、トッドAO。本国公開題名は、Gruppo di Famiglia in un Interno。2017年2月11日よりデジタル修復版を上映(配給:ザジフィルムズ)。



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心に残る映画たち(その3)「無伴奏シャコンヌ」

原題:Le Joueur de Violoncello Cello
1994年製作/フランス・ベルギー・ドイツ合作


芸術の本当の意味を追及するため、地下鉄の構内に身を置き演奏活動をするヴァイオリニストの姿を描く作品。
音楽評論家としても著名なアンドレ・オディールの『Musikant』の映画化。


1995年日本公開@東急シネマスクエア
DVDも持っています。
絶頂期のギドン・クレーメルが演奏しており、音楽の監修もしています。
あらすじなどはこちらで。

====MovieWakerより転載
フランスのリヨン。ヴァイオリニストのアルマン(リシャール・ベリ)は、10年前にソリストの代役としてデビューを飾り、以後、第一線で活躍してきたが、芸術家としての自分に疑問を感じ、また同じヴァイオリニストの親友が自殺したことをきっかけに舞台から退いた。彼はメトロの地下道を次なるコンサートホールに選び、自分の欲求のまま演奏し続ける。彼の脳裏に去来するオペラ歌手だった昔の恋人との思い出……。始めは誰の関心も惹かなかったが、やがて通行人の足を止めるようになる。音楽好きのメトロ職員ダロー(ジョン・ドブラニン)との出会い、アルマンの昔の姿を知る音楽家シャルル(フランソワ・ベルレアン)との再会、そして心を閉ざしがちだった切符売りのリディア(イネス・ディ・メディロス)も、アルマンの奏でる音色によって癒されていく。ある日、メトロで停電が起きる。動揺する通行人たちを優しくつつみこむアルマンの演奏。明かりがついた時、アルマンとリディアは自分たちの心が愛情で結ばれていることを知る。翌日アルマンは初めてチェロ奏者と共演、周囲の人々も演奏に参加し音楽の饗宴となったが、リディアはその輪の中に入っていくことができない。しばらくしてメトロで工事が始まる。アルマンは居場所を失い、立ち退きを要求してきた警官にヴァイオリンを叩き壊されてしまった。リディアが仕事を辞め自分のもとから去ったことも知り、悲嘆に暮れる。そんなアルマンの様子を遠くから眺めていたシャルルは、彼に自分のヴァイオリンを差し出す。アルマンに残された道はひとつ、ヴァイオリンを弾き続けることだけしかない。彼はメトロに生きるすべての人々のためバッハの『シャコンヌ』を奏で続ける。人生の喜び、普遍的な愛、そして自分が求めてきた芸術の真の姿をアルマンは遂に見い出すのだった。





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心に残る映画たち(その1)「天井桟敷の人々」

父は映画も好きだった。
自宅にいたころは 父が見る「◎◎洋画劇場」などを門前の小僧状態で一緒に見ていた。
それで自然と名画、というものになじんだと思う。

大学生以降の20代はちょくちょく映画を見に行ったものだ。

そういった中でその後の私の人生に深く根づいた映画は数限りない。
思い出す順にすこしご紹介してゆこうと思う。


まず 筆頭は 「天井桟敷の人々」  だ。
原題は:Les Enfants du paradis
1944年フランス

人間の自由とは、誇りとは、そして恋とは、人生とは。
何より「人間とは」。
19歳の時にある人に映画館に連れて行かれ観て以来、
何度 観たでしょうか。
このシーンは冒頭の方で、旅芸人一座の天才パントマイム役者「バチスト」とのちに運命の恋の相手となる高級娼婦「ギャランス」の出会いともなる場面です。 雑踏で財布をすられた男性が隣にいたギャランスに濡れ衣を着せピンチに陥るところを、一部始終を見ていたバチストがマイムでその状況を説明し、疑いを晴らす名場面です。
このほかにも 後半でギャランスとバチストが再会しやっと結ばれるときに、思いつめるバチストにギャランスがつぶやく名セリフ「恋なんて簡単よ」というシーンも強烈に心に残っています。
ただ、このセリフは映画版の字幕のもので、DVDなどでは訳が違っており(忘れました)、そちらだったらそこまで焼き付いてなかったかも。 映画の字幕の訳ってほんと大事。
原語のセリフ、そういえば調べてませんがなんだったんだろう。
知りたい。
長いので2部に分かれていて途中に休憩が入ります。
バチスト、ギャランスとギャランスの友人の悪党、シェイクスピア役者の4人を軸とし、いろいろな人生模様が描かれ、その中で 人間にとっての本当の尊厳とはなにか、誇りを貫く高潔さは誰に宿るか、といったいろんな命題を学生の私に植え付けた忘れられない作品です。
観たことがない方、知らなかった方は ぜひ一度はどうぞ。
映画史上の最高傑作のひとつではないでしょうか。










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銀河鉄道の夜~さそりの話

川の向う岸が俄(にわ)かに赤くなりました。
楊(やなぎ)の木や何かもまっ黒にすかし出され見えない天の川の波もときどきちらちら針のように赤く光りました。
まったく向う岸の野原に大きなまっ赤な火が燃されその黒いけむりは高く桔梗(ききょう)いろのつめたそうな天をも焦(こ)がしそうでした。
ルビーよりも赤くすきとおりリチウムよりもうつくしく酔(よ)ったようになってその火は燃えているのでした。


「あれは何の火だろう。
あんな赤く光る火は何を燃やせばできるんだろう。」
ジョバンニが云(い)いました。

「蝎(さそり)の火だな。」
カムパネルラが又(また)地図と首っ引きして答えました。

「あら、蝎の火のことならあたし知ってるわ。」

「蝎の火ってなんだい。」ジョバンニがききました。

「蝎がやけて死んだのよ。その火がいまでも燃えてるってあたし何べんもお父さんから聴いたわ。」

「蝎って、虫だろう。」

「ええ、蝎は虫よ。だけどいい虫だわ。」

「蝎いい虫じゃないよ。
僕博物館でアルコールにつけてあるの見た。
尾にこんなかぎがあって
それで螫(さ)されると死ぬって先生が云ったよ。」

「そうよ。だけどいい虫だわ、

お父さん斯(こ)う云ったのよ。

むかしのバルドラの野原に一ぴきの蝎がいて
小さな虫やなんか殺してたべて生きていたんですって。
するとある日
いたちに見附(みつ)かって食べられそうになったんですって。

さそりは一生けん命遁(に)げて遁げたけど
とうとういたちに押(おさ)えられそうになったわ、
そのときいきなり前に井戸があってその中に落ちてしまったわ、
もうどうしてもあがられないでさそりは溺(おぼ)れはじめたのよ。

そのときさそりは斯う云ってお祈(いの)りしたというの




ああ、わたしはいままで
いくつのものの命をとったかわからない、
そしてその私がこんどいたちにとられようとしたときは
あんなに一生けん命にげた。
それでもとうとうこんなになってしまった。
ああなんにもあてにならない。

どうしてわたしはわたしのからだを だまっていたちに呉(く)れてやらなかったろう。
そしたらいたちも一日生きのびたろうに。

どうか神さま。私の心をごらん下さい。
こんなにむなしく命をすてず
どうかこの次には
まことのみんなの幸(さいわい)のために
私のからだをおつかい下さい。




って云ったというの。
そしたらいつか蝎はじぶんのからだがまっ赤なうつくしい火になって
燃えてよるのやみを照らしているのを見たって。
いまでも燃えてるってお父さん仰(おっしゃ)ったわ。
ほんとうにあの火それだわ。」




宮沢賢治の小説に繰り返し出てくる自己犠牲、そして死の話がここにも出てくる。
よだかの星 とオーバーラップするものがある。

小学生の頃に読んだ「銀河鉄道」はよくわからなかった。
思春期になって再び読んだとき
さそりの火のエピソードに 深い衝撃を受けた。 ショックともいえるものだった。

その後もこの話は心に深く刻まれ、50代に入った今も 変わらず 根幹に突き刺さっている。





テーマ : 文学・小説
ジャンル : 小説・文学

逝く夏の歌

並木の梢が深く息を吸つて、
空は高く高く、それを見てゐた。
日の照る砂地に落ちてゐた硝子を、
歩み来た旅人は周章てて見付けた。

山の端は、澄んで澄んで、
金魚や娘の口の中を清くする。
飛んでくるあの飛行機には、
昨日私が昆虫の涙を塗つておいた。

風はリボンを空に送り、
私は嘗て陥落した海のことを 
その浪のことを語らうと思ふ。

騎兵聯隊や上肢の運動や、
下級官吏の赤靴のことや、
山沿ひの道を乗手もなく行く
自転車のことを語らうと思ふ。

   



「山羊の歌」 から。

テーマ :
ジャンル : 小説・文学

子供は親を選べない。

瀧波 和賀さんという方の書いたこちらの文章、 なんとも印象深い内容ですね。


母が毒親の一線をこえたあの日、子供時代が終わってしまった


私の母親は死んだ今振り返れば ここまでの毒親ではなかったですが 少なくとも大学ぐらいまでは私にとっては十分に毒親だった部分がありましたので、非常によく分かってしまう自分がいます。
    



私は次女で真ん中っ子。
姉は「最初の子」だし 弟は「最後」かつ「待望の息子」。
ただ私だけは幼稚園時代から何かと目立つ子で
お遊戯会でも主役、オルガン教室でも一番、
小学校にあがったらお勉強も一番。
  
母親の干渉(愛情ではなく)だけは凄まじく
高校受験前に「音高は行かない。普通高校に行く」と血みどろの衝突で自我を押し通すがその後もまあご想像におまかせしますが相当なものでした。
  
子供の頃からインプットされている母親の言葉は「子どもなんかいなければよかった」「お前たちがいなければ離婚してる」でした。
私の思春期の潜在意識は、この彼女が書くように 親に愛されたい、親に必要とされたい、「お前がいてよかった」と思われたい、そういう本能的な飢餓感に覆われていたのだと思います。そう。そのときは深層に隠されてた。
   
   
…だって 子供なんて親に承認されなければ 命すら危うい存在ですからね。

その飢餓感は一生 私の心の底辺に残ってた気がします。

ですから自分の青春時代は心底きつかったですね。
   
  

その苦しさと対峙し乗り越えるために精神分析や心理学やカウンセリングの書籍をむさぼるように読みました。
カレン・ホルネイの「自己分析」という本は最初に私を救った本でした。
次にR.D.レインのいくつかの書籍。
特に「自己と他者」は自分との向き合い方、人との向き合い方を根本から変えたかもしれません。
分析からスタートし最終的に河合隼雄のカウンセリング系の本に行き着いてようやく色々と整理がつけられた感があります。
   
  
振り返れば。
  

分析の過程で 母親の精神分析も私なりにしてきて、母親がなぜそのような事になったかを理解しようとしたことは大切なことだったと思います。
母親の生い立ち、幼いころからどんな思いと経験を重ねてきた人であるか、父親との出会い、いろんな「歴史」をひもとき仮想のカウンセリングをしてゆく。
同時にネガティブな感情を吹き飛ばしたあとに自分の中に残る彼女への評価すべきいろんな記憶を丁寧に思い起こして「良いカード」として目の前に並べて行く。
人への評価は常に公平でなくてはなりません。  
    
 
憎悪(当時 憎悪したのは事実です)の対象を精神分析して相手と相手を憎悪する自分の理解をすることでのみ、憎悪を乗り越え最終的に解脱することができるのだと思いました。
    
   
憎むという事は対象を求めて得られない何かを抱えていることです。愛憎表裏一体とはよく言ったものです。
===
何を求めていたかを受け入れること。
何に飢えていたかを理解すること。
==
この著者は知性によって正しく自分や母親と向き合い、客観的なもう一人の自分を確立したことで 自分の苦しみから自分を解放したのだと思う。
 
  
母が死んで4年半たちました。
私は母をこれほどに愛していたのかと今は静かに振り返っています。


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テーマ : エッセイ
ジャンル : 小説・文学

宮部みゆきの「模倣犯」

たまたまテレビ東京で宮部みゆきの「模倣犯」(映画)を放映していたので見るとはなしに見ていた。
作業しながらの「ながら見」だ。
ところがどんどん引き込まれてしまい結局作業の手を止めて最後まで見ることに。
良い映画だった。
 
橋爪功さんはやっぱりいい俳優だなあ。
でも一介の豆腐屋にしちゃかっこよすぎるかな。
「ハードボイルドな豆腐屋」


岸部一徳の刑事が犯人逮捕するときのセリフ!

「お前には… うんざりだ。」 

に 妙にシンクロしました。
そして

「あなたはオリジナルじゃないのよ
 模倣犯なのよ!」


と言われた瞬間に自意識の砦が崩壊する犯人。
ははぁ。なるほど。


つくづく、人間て動物の持つ、この「自意識」って怪物は諸悪の根元。

アイデンティテイとは「私はこういうヒトである」と自分で自分を名付けることに過ぎず、
そのような「物語」を必要とする段階ですべての人間とはすでに病んでる。

猫はそんなもの必要としない。
常にあるがままだ。
人間、そもそもが壊れてると思う。

「自意識」 これはいったいいつ目覚めるのか。
生まれたての赤ん坊には猫並に無垢な気がする。
鏡を見たり「あたしってかわいい?」と気にしだす段階は既に病気が始まっているわけだ。

そう。

鏡という代物。

こんなものが存在しなければ人は内側から見た自分と外側から見た自分のバランスを気にすることも無かったろうかと思う。



そんな事を考えさせる作品だった。



テーマ : ドラマ・映画
ジャンル : テレビ・ラジオ

夏至

「夏至」は一番さみしい日だ。
胸の奥がちりりと痛む
死に向かう転換点のような
切ない日。

盛夏はこれから
なのに 
今日から日々衰退してゆく太陽
あとはもう
夜に浸食されてゆくだけ。

知らぬうちに
すこしずつ喪われゆくかがやき。
まだ大丈夫
と思っているうちに
消えゆく何か。


夏至の太陽。
さよなら。
さよなら。
私の人生


いまから用意しておくさようならのことば







無神経で無知なるものたち

http://lite-ra.com/2014/11/post-665.html
【東山紀之が“反ヘイト本”を出版していた!自らのルーツと在日韓国人への思いを告白】

>安倍よ。一度、東山の本を読んでみるといい。
>頭の悪いオマエでも、どちらがまともで誇りある日本人なのかがよくわかるはずだ。

安倍とか言わなくても、そこらじゅうにいる想像力に欠けた人間に云いたい。
敢えてとても私的な話を此処に書く。


「うちの女たち」の波乱万丈ぶりには例外はなく、実姉にもそりゃもう波乱の過去があった。
そのひとつが、ヒガシも子供の頃に住んだという、「川崎、桜本」に暮らした時代の話だろう。
前後の経緯は伏せるが、彼女は当時、人目を忍んで、いわゆる在日の青年と暮らしていた。
日本で生まれ育っているが国交断絶の北朝鮮籍だから、帰化も不可能。
「結婚」しようにも国交のない国籍の相手との法律の壁は分厚い。
陽のあたる職業にもつけない。
在日同士のネットワークで助け合って暮らしている。
焼肉屋、ソープランド、パチンコ屋…etc
嫌でもそういった裏世界にしか彼らの居場所はないのだ。


私が彼らのところに遊びに行った時は、一族皆でそれはもう大変に暖かいもてなしを受けたものだ。
(桜本の焼き肉とキムチの美味しさは忘れないよ!)

その当時、ちょうど私は最初の結婚秒読みだった。
相手は同じ会社同期の、ごく普通のピアノの好きなボンボン。
母親の兄(叔父)は今でいうメガバンクの副頭取。

相手のご両親に挨拶に行った時、姉のことを調べ上げてあり、

親戚に朝鮮人の血が入るのはちょっと…
 従兄妹に今来ている縁談にさしさわる


と向こうの母親が難色を示したものだった。
私の両親はリベラルな人たちなので、
「そんな家の人と結婚せんで良い」とひとこと。
彼は彼で、自分の親がそんなことを言う人間とは夢にも思っていなかったらしく衝撃を受けていたっけ。


どこにでもいる平凡な市民がサラリと提示するこういう差別感。

それが日常で無自覚になされるもの。



たまたま姉はその後紆余曲折があり、その青年とは別れてしまったけど、
私には貴重な経験だったのだ。


「私はいいのよ、でも 親戚の縁談に影響が出るのでね」


こういったセリフ。


だけどこんな理不尽難な理由なら「犠牲」を気にせず押し通すのが私にとっての正義。
世の中の皆がそういう選択をしていったら少しはこの世界も暮らしやすくなるのではないのか。


みな自分のことでないものには徹底的に無知で不勉強だ。
無知は「害悪」であり、大きな罪であるということを 声を大にして言いたいのだ。








テーマ : エッセイ
ジャンル : 小説・文学

花束

春の庭の花に胸をときめかせながら
花束を作った
逢うことのない あのひとに向けて


あのひとは
なぜ 摘むのかと いぶかしがる

「庭で咲かせておけばよいのに・・・・」


美しさを
ひとつの花束に凝縮して
あのひとに 伝えたい
ことばにならない私の想い


在るだけで美しいもので充分なら
音楽家も作曲家も画家もいらぬ
鳥の声や 風の音
ただ 皆 あるがままに聴けばいい
完全無比な神の芸術


それは
在るがまま では満たされぬものの所業
いつも 己 を媒介させずにおられぬ
不完全な存在の業



私は 花を摘む
ただ「在る」だけでいられぬから

今日も花束をつくる
誰かに伝えねばいられぬから



春の庭2015






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テーマ : 自作詩
ジャンル : 小説・文学

枯木と風の歌<立原道造>


私はうそをつき芝居をする
自分をゆるしたすべてのお前に
私は黙って立つてゐる
ちようどおこつた子供のやうに

枝は何と邪魔なのだらう
うつかりするとそれは裏切る
私はにくしみの言葉を捨てて
風にささやきかける


あれは祈りだ 誘ふ者に
そしてしづかにもう一度
水に映つたかげを眺める
いつまでも揺れないやうに


    *


私がそんなに駆けるときに
お前はなんと悲しさうなのだ
お前はぢつと残つて 啞(おし)のやうに
たゞ身を揺るばかりなのだ

- - - - -









テーマ :
ジャンル : 小説・文学

恋は

恋は
さながら悪い夢
 
薬物中毒患者のように
待ち焦がれたわずかな時間と引き換えに
他のすべての時間を失い
みずから囚われ人となる
 
愚かな愚かな悪夢

それなのに
その悪夢の中に居る時が
一番 凝縮した生を燃焼しているとは
どういう冗談、
どういうあやかしだ。





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2010年 秋


 

テーマ : 自作詩
ジャンル : 小説・文学

鴎(かもめ)<三好達治>

ついに自由は彼らのものだ 
彼ら空で恋をして
雲を彼らの臥所とする
ついに自由は彼らのものだ

ついに自由は彼らのものだ 
太陽を東の壁にかけ
海が夜明けの食堂だ
ついに自由は彼らのものだ

ついに自由は彼らのものだ 
太陽を西の窓にかけ
海が日暮れの舞踏室だ
ついに自由は彼らのものだ

ついに自由は彼らのものだ 
彼ら自身が彼らの故郷
彼ら自身が彼らの墳墓
ついに自由は彼らのものだ

ついに自由は彼らのものだ 
一つの星をすみかとし
一つの言葉でことたりる
ついに自由は彼らのものだ

ついに自由は彼らのものだ 
朝やけを朝の歌とし
夕やけを夕べの歌とす
ついに自由は彼らのものだ




 三好達治 著 詩集「砂の砦」より




テーマ :
ジャンル : 小説・文学

涙  <石原 吉郎>

レストランの片隅で
ひっそりとひとりで
食事をしていると
ふいにわけもなく
涙があふれることがある
なぜあふれるのか
たぶん食べるそのことが
むなしいのだ
なぜ「私が」食べなければ
いけないのか
その理由が ふいに
私にはわからなくなるのだ
分からないという
ただそのことのために
涙がふいにあふれるのだ





                  石原吉郎 詩集/「満月をしも」

テーマ :
ジャンル : 小説・文学

石原吉郎のことば

大量殺戮のもっとも大きな罪は、そのなかの一人の重みを抹殺したことにある。 そしてその罪は、ジェノサイドを告発する側も、まったくおなじ次元で犯しているのである。 戦争のもっとも大きな罪は、一人の運命にたいする罪である。およそその一点から出発しないかぎり、 私たちの問題はついに拡散をまぬかれない

              『望郷と海』 (石原吉郎)

望郷と海 (始まりの本)望郷と海 (始まりの本)
(2012/06/09)
石原 吉郎

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憎むとは 待つことだ
きりきりと音のするまで
待ちつくすことだ 
                       -「待つ」


詩における言葉はいわば沈黙を語るためのことば、沈黙するためのことばであるといってもいいと思います。もっとも語りにくいもの、もっとも耐えがたいものを語ろうとする衝動が、ことばにこのような不幸な機能を課したと考えることができます

----

詩人が常に自分の作品の最終的な責任者であるかというと必ずしもそうではありません。作品の中には作者が最終的に責任を負いきれない部分があるのがふつうですし、その部分は、読者にとっても作者にとっても難解な部分であり、しかもその部分によって作品全体が支えられている

                      ー「沈黙するための言葉」

石原吉郎詩文集 (講談社文芸文庫)石原吉郎詩文集 (講談社文芸文庫)
(2005/06/11)
石原 吉郎

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胸に 鉛のかたまり
私を押しつぶそうと
常にのしかかる
重苦しいなにか
 

声にならない叫びに
胸が焼け付き
息もできぬ
 

   
   自分の命が重荷になり
   「募金箱」を探してみたが
   あいにくと 
   そんなものは 見つからぬ
 

 
 

テーマ : 自作詩
ジャンル : 小説・文学

若さ かなしさ<永瀬清子>



東京の小さい宿に私がいた時
あの人は電話をかけてきて下さった
あの人は病気で私に会いに来れないので
それで電話で話したかったのだ


かわいそうにあの人はもう立てない病気
それでどんなにか私に会いたかったのだ
こんどはどうしても会えないよと
とても悲しそうに彼は云った


あの人は私よりずっと年上だし
学識のあるちゃんとした物判りのいい紳士
そんなに悲しい筈はないと若い私は思っていたのだ


過ぎゆく人間の悲しさを
私はまだ思いもせずに
長く長く電話で話す彼に当惑さえしていた
そして片手の鉛筆で
何か線や波形を描いていた


枯葉のように人間は過ぎていく
その時瀕死の力をこめて私を呼んでいたのに
そして波のように私にぶつかりなぐさめられたかったのに―――
「人間ってそんなものよ」「病気ってそんなものよ」


私はああ、恐ろしいほどのつめたさ
若さ、思いやりのなさ
そそり立つ岩さながら―――

私を遠くからいつも見つめていたそのさびしい瞳に
それきりおお  私は二度と会うことはなかったのだ





あけがたにくる人よ (思潮ライブラリー 名著名詩選)あけがたにくる人よ (思潮ライブラリー 名著名詩選)
(2008/06)
永瀬 清子

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詩集を開いたときに 飛び込んできたこの詩。
ああ私もどれだけ年を取ってきて、この苦い思いを噛みしめていることか。

若さとは、傲慢さ、思い上がり、他者への思いやりのなさ。



テーマ :
ジャンル : 小説・文学

あけがたにくる人よ<永瀬清子>


   あけがたにくる人よ
   ててっぽっぽうの声のする方から
   私の所へしずかにしずかにくる人よ
   一生の山坂は蒼くたとえようもなくきびしく
   わたしはいま老いてしまって
   ほかの年よりと同じに
   若かった日のことを千万遍恋うている

   その時私は家出しようとして
   小さなバスケット一つをさげて
   足は宙にふるえていた
   どこへいくとも自分でわからず
   恋している自分の心だけがたよりで
   若さ、それは苦しさだった

   その時あなたが来てくれればよかったのに
   その時あなたは来てくれなかった
   どんなに待っているか
   道べりの柳の木に云えばよかったのか
   吹く風の小さな渦に頼めばよかったのか

   あなたの耳はあまりに遠く
   茜色の向うで汽車が汽笛をあげるように
   通りすぎていってしまった

   もう過ぎてしまった
   いま来てもつぐなえぬ
   一生は過ぎてしまったのに
   あけがたにくる人よ
   ててっぽっぽうの声のする方から
   私の方へしずかにしずかにくる人よ
   足音もなくて何しにくる人よ
   涙流させにだけくる人よ




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(2008/06)
永瀬 清子

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亡霊

あなたは消えた
わたしは消えた
あなたの心のなかのわたし
わたしの心のなかのあなた
森には誰もいない
視界をよぎるのはあれは心が生み出した幻の残像


もう 風も吹かぬ
誰も知らない誰も訪れぬ 
黒い黒い深い森で
古代の壁画のように遺された文字は
もう何も語らない
森には誰もいない


たくさんいた小鳥たちの
最後の一羽が死んで
訪れるものももういない
ときおり 古(いにしへ)の夢が残したやまびこが
風と共に こだまするだけ




永遠に取り戻せぬ
失った未来



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Autumnl 2014


テーマ : 自作詩
ジャンル : 小説・文学

白昼夢

意思を持って強く念じれば 
夢も本当になる
と信じた私と
夢は夢として 誰にも邪魔されず 
ただ  夢見続けたかっただけの
アノヒトと



アノヒトの夢に 私の夢がある日迷い込んだ
一緒に夢を見た
きつく抱き合った
誓い合った
だけどアノヒトだけが 生き残った
最初から自分は死ぬ気のなかった
心中の片割れとして


夏の昼下がりの陽炎のような
美しい言葉と
ありふれた悲喜劇


真っ暗な 棺のような
音の無い森で
目覚めた私
  






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Autumnl 2014


テーマ : 自作詩
ジャンル : 小説・文学

金継

HDDを整理していた。
2002年だの2003年だのの画像フォルダを久しぶりに眺めた。
前のマンションでの4匹の猫達。
「幸せだったのにね…」とおもわずひとりごつ。

幸せだった、とは 猫たち。
この子たちとの時間が幸せで平和だった。

4匹のうち2匹は3年前に旅立ってしまった。
他の2匹も まだ子猫だったり、ぴちぴちの若猫だ。
今は2匹とも年を取ってしまった。
 
そして人間も。


父も母もこの時は元気だったけど もう居ない。



夫とは 続かないかと思った割には続いていて 
この頃二人の間にあった「嵐」はいつか過ぎ去り
それなりに馴染んで平和な日々となり
何よりも二人共 年を取った。


この頃 まだ音楽は再開してなかった。
ただ ひとりでピアノを(ピアノの音が嫌いな夫の居ない時に)弾くほかは、もっぱら音楽は聴くばかりだったっけ。


音楽(チェロ)を再開したことで変わった運命

出会ってしまったために起こった、あの悲惨な事件。
あれより酷いことはないと思うほどの凄惨な修羅の末に滅ぼされた私の心はかろうじて永らえたものの、今 これは生きていると言えるのか言えないのか
わからないけれど とりあえずは日々を暮らしている。

去年(2013年)の突発的な転落事故が原因で少しばかり健康に制約を受けた。
あの頃 想像もしてなかった未来。




「音楽は魔物」 
と その人は言った。
私と酒を酌み交わしながら。


そうだね。魔物だね。
私達はその悪魔に魂を売ってしまったのだ。
その割には見返りに大した音楽の演奏能力は与えられなかったけどね。


声と引き換えに望むものに全てを賭けた人魚姫と
私達は変わらないのかもしれない。

勝負に負けて最後は海の泡になるとこまで同じ?


私にそう語った、かつて私の人生で最も愛と尊敬を捧げた相手だったその人は、
ある日すさまじいばかりの「鬼」に変貌してしまった。
魂を鬼に喰らわせた者は、己も鬼に変わってしまう。
悲しい、悲しい、鬼。
愛しい人の変わり果てた姿を見たオルフェウスのように 
私もそこで 黄泉の坂をUターンしてすぐさま戻らなければなかったのだ。
それなのにグズグズど思いきれず
亡者といつまでも添い遂げようとしてしまった。
とっくに死んでいる者と。


去年の転落事故も
その悲惨な出来事と無縁ではないと密かに心の奥で確信している。
あの体験で 心が吹っ飛んだ私は、一時かなり危険な状態になった。毎日が死と隣合わせだった。
3年かけてどうにか踏みとどまったものの、不眠症が残り、そのために処方されていた睡眠薬が原因の事故だから。

人生って本当に因果、因縁で綴られてゆくのだと感じる。





しみじみと 旧い日々の哀しさ懐かしさと、
今なお生きてゆくことの心の痛みとを噛み締めたのだった。



それでも人は生きてゆく。
人の心は、しぶとくいつか蘇り再生する。


一度 割れてしまった陶器を金と漆で再生させる「金継」という技術がある。
その器は無欠だった以前の器とは別の器となる。
金継した傷痕が新しい美しさになり味わいとなる。

しかし 割れる前の強度には二度と戻らないから、いたわりつつ大切に永らえなければならない。

人の心も同じなのです。






テーマ : エッセイ
ジャンル : 小説・文学

虚空

誰もいない
なにもかも 寂しい
ひとりきりだ
誰もいない
ひとりきりでいつまでもバッハを弾く
早く帰りたい
(どこへ)


八方ふさがりで 壁の向こうに虚空が広がる
星もない黒い宇宙だ
早く終わらせたい
さよなら
さよなら
さよなら、自分
さよなら あなた
さよなら 世界
 
たまりつづける音にならぬ 声




テーマ : 自作詩
ジャンル : 小説・文学

一人づつが <高村光太郎>

一人づつが眼をあかないで、何の全体。

おれは下からゆく






病床に母を見舞う

80歳の不治の病の母を見舞う。
小さく別人のようになった母。

ずっと母とは宿敵みたいだったけども
死にゆく者は皆、仏になる。

母は田舎の人で、そういう死生観を持っていた。

死ぬほど苦しめられて憎みあった姑の事すら
死の前には恨みを棄てて世話をしていた。
父が、ハイエナみたいな親族に腹を立てて、
「こんなものがあるから、いけない」と怒って
祖母の位牌をゴミ箱に投げ込んだ事があったが
母は、「仏様にそんな事をしてはいけない」と拾い上げた。


訪問販売のセールスマンにすら礼儀正しくお断りをしていた母。
「ともちゃん、自分のお父さんがそういう仕事で、相手にけんもほろろに追い返されるところを想像しなさい」と言って。

「どんなに前の日に喧嘩してても、朝、家を出る時には 気持ちよく送り出してあげなさい。それきり事故で死んでしまったら、喧嘩別れが今生の最後になってしまうのは良くない」と教育された。
(娘には随分ひどい言葉を投げつけては傷つけてきたくせに)


そういうところのある人間だった事を思い出す。


自分の根幹にも、どこか引き継がれている気がした。


次の正月がない気がする、母。





【追記】

2014.7.21 没。
合掌。










わたしを生かすもの

色んな人との約束があるから
日々を生きている
約束を果たさなければいけないから
そこまでは進む

約束がひとつもなくなれば解放されるだろう
あるいは 約束を守らないことにすれば。


でも約束は神聖なもの
それが私を縛り
次の約束まで歩かせる


それが 私を生かすもの
唯一の





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April 2014

テーマ : 自作詩
ジャンル : 小説・文学

コトバなど

言葉は私と誰かを繋がない。

言葉はひとと私を隔てる役にしかたたない。

言葉は方程式ではなく不完全な道具だ。

コトバは

人と人とを遠ざける誤解のかたまり。

間違えて 傷つけるばかりで
 
ひとつも心を伝えてくれない



もう私は黙っていよう。

詩の言葉だけにしよう

もう猫のように言葉なく生きよう

コトバ コソ ガ ショアク ノ コンゲン




何もかも棄てたい。

猫と樹々を眺め、深く思う



桜と猫
桜と猫 posted by (C)Guillaume





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April 2014

テーマ : 自作詩
ジャンル : 小説・文学

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黒猫

Author:黒猫
このブログはHPから詩の部分だけをまとめました。

10代の頃からこれらの詩はいつも自分の中にありました。
私の中にとけ込んだ詩人たちんの言葉と私自身のつたないことばだち。

八木重吉の「秋の瞳」序文ではありませんが、このつたない詩を読んでくれたあなた  私を心の友としてください。

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